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大したことは何も書いていない

7月16日

夏が僕を包む。日に日に強くなる日差しは僕の弱々しい肌を刺激し、蝉の声は暑さを膨張させる

 

それでも僕は夏が好きだ。どこまでも青い空はいつもより遠くに見えて、一日の終わりを告げる夕暮れ時の風はどこか淋しさをはらんでいる。僕たちの思い出を運んでいるかのように

 

明日が退院となるので、実質的に入院最終日となった

 

担当の看護師さんは結局見当たらなかった。夏休みだろうか

 

手紙を書き残そうと思ったけれど、半年後再開した時に気まずい気がするし、やめておいた。何より少し気持ち悪い

 

凪良ゆう先生の〝汝、星のごとく〟を読了する

 

僕は田舎の長男として生まれた。だから地元に就職した。本当はどこか遠くの街に移りたかったのだけれど

 

都会の人が思うより、田舎社会というのはグロテスクだ。田舎に生まれて、自分の人生を歩むことはとても難しいことだと思う

 

毎度思うことだが、本屋大賞に選ばれる作品は結構良い作品が多い印象だ。読みやすくて、面白いものがたくさんある

 

社会人になって文庫本ではなく、ハードカバーの新作を買うことに躊躇がなくなってきた(もちろん毎度毎度ハードカバーを買う余裕はないが)

 

ハードカバーは、本としてのデザインが凝られている事が多い。今回もそうだった

 

紫のカバーに、金色の文字でタイトルが書かれていた

 

タイトルの印刷の1部に黒い粒が見られた。それがゴミだと思って指で擦ったら、金の文字が少し取れてしまった。ゴミではなくて剥げてしまっていたらしい

 

剥げたのはほんの一部だけれど、僕は少しそれが気になってしまった

 

手術の翌日に看護師さんと話した時、「繊細なんだね」と優しく言われたのを思い出す。僕はどうやら繊細な人間らしい

 

10日も入院すると外での生活が大分前のような気がして、思い出せなくなってしまった

 

何より退院するのがちょっと嫌だという気持ちが芽生えてきている

 

もちろん家には帰りたいし、美味しいご飯を食べたりお酒を飲んだりしたい

 

けれど久しぶりに仕事を忘れて、ゆっくりと本を読んだりだらだらと過ごしたりすることができた。こういう時間も人生には必要だ

 

最近はなんとなく消灯後にデイルームに行って夜景を眺めている。山の上にある大学病院の5階から眺める景色は意外と壮観だ

 

昨日窓の外に見える山の上にきらりと光る星を一つ見つけた。それが何という星なのか知る術を僕は持ち合わせていなかった

 

久しぶりのゆっくりとした時間、初めての体験続きで疲弊した心が僕に学びを与えてくれた気がする

 

僕は明日ここから出る。学び続けることを忘れてはいけない